IP電話クラウドPBXと秘書サービスを導入してみた

ブログでははじめまして、担当のsaitoです。
よろしくお願いいたします。

IP電話クラウドPBXと秘書サービスの導入を行いましたので、導入過程や得られた知見等をまとめました。

当社は「IT前提経営」のもと、場所や時間に縛られずに働くノマド制を実施しています。
インターネットの発達や各種クラウドサービスの活用により、当社社員の多くはノートパソコン1台で、必ずしもオフィスに出社する必要がなく業務を行えるようになりました。
しかし当社の代表電話番号をはじめとする固定電話だけは、従来通り社内に大きなPBX(構内交換機)が置かれ、打ち合わせ拠点として設置している東京コアや各地域のコアにいなければ受けられない、という状況が続いておりました。

今回、固定電話をも全てクラウド化し場所に縛られず利用できるようにすると共に、電話対応を秘書サービスにアウトソーシングする事により、本来業務に集中できるようになりました。

IP電話クラウドPBX導入

導入前の電話システム

  • NTT東日本 ひかり電話オフィスA 複数回線契約(代表組)
  • 東京コアにPBXを設置(デスクトップパソコンほどの大きさの装置)

所謂「ビジネスホン」です。
着信した電話を社内のそれぞれの電話機で受けたり、転送したり、同じ電話番号を複数の電話機から同時に使えるなど便利ですが、社内にPBXと呼ばれる装置を設置する必要があります。

IP電話について

IP電話は従来のNTT等の電話網により接続される通話とは異なり、インターネットのIP通信を利用し通話できる仕組みです。
NTTひかり電話の普及など、IP電話自体はメジャーになりました。
今回はオフィスでPBXを導入して行われるようなビジネスホンの仕組みをクラウドで行う、クラウドPBXの導入を目指します。

クラウドPBXサービス選定

いくつか候補はありましたが、現在利用している電話番号をそのまま移行できる「番号ポータビリティ」に対応している事、設定の自由度が高い事、後述するIVRを簡単に導入できる事から、Cloco株式会社のクラウドPBXサービスを導入する事にしました。

導入~切替え

Clocoとの契約はスムーズに行えましたが、既存のNTTからClocoへの番号ポータビリティに、本当に苦労しました。
ひかり電話のオフィスタイプかつ、子番号がいくつかぶら下がるという複雑な構成であった事に起因するのですが、当社(私)に当初ビジネスホンの知識が無かった事、NTTの担当者様がクラウドPBXへの理解が薄かった事もあり、思うように進まない時期がありました。
このあたりはClocoの担当者様にかなり助けて頂きました。
最終的に、親番号を番号ポータビリティしたいが、そうすると子番号が消えてしまう(子番号は諸事情で残す必要があった)ため、親番号と子番号を入れ替えるというNTTの工事が必要となりました。
ビジネスホンの知識がないと全く理解できず、今回私もかなり勉強させて頂きました。
これらの事前準備さえ整えば、あとは番号ポータビリティの手続きをClocoにお願いし、切替え自体はスムーズに完了しました。

メリット

まずはクラウド化したことで、インターネットさえ繋がっていればどこでも固定電話番号を発着信できるようになりました。スマートフォンにIP電話アプリを入れれば、どこにいてもクラウドPBXに接続し利用できます。

もうひとつ、PBXの設定が自由にできるようになりました。
いままでのPBXは当社からするとブラックボックスで、オフィス移転時に工事業者が設定したままの状態で使っていました。
クラウドPBXはブラウザから管理画面に入れば自由に設定が変更でき、どの番号での着信でどの端末(スマフォ)を鳴らすとか、同時にこの端末も鳴らすといった設定が簡単にできます。

デメリット

IP電話(VoIP)が国際的な規格だからという事だと思われますが、日本の一般的なビジネスホンとは少し使い勝手が異なります。
例えば部署の誰かが電話を受けて一旦保留、「○○さん3番にお電話です」のような光景はオフィスでよく見ると思いますが、今回導入したクラウドPBXではそうはいかず、専用の転送用コマンドをダイヤルする必要があるなど、利用に少し慣れが要ります。
現在では社員が操作に慣れてきたため問題なく運用できていますが、そういった面では従来のビジネスホンは日本の商習慣に合っていて良かった面もあると思いました。

また、電話もインターネット回線を経由する事になるため、今までに増してインターネット接続品質が重要になりました。
ひかり電話を辞めたことでネット接続サービスの選択肢が増えたため、東京コアのインターネット回線をNUROに変える、といった事も別途実施しております。


IP電話導入により不要になったPBXと旧電話機

秘書サービス導入

当社のエンジニアの多くはノマド制を活用していますが、会社としての機能を維持するため管理部門は東京コアに設置されており、電話対応もそちらで行っておりました。
現在、当社では平均して1日に数十本の着信があります。しかしこの中に当社にとって有用なものは実はわずかで、多くが飛び込み営業電話だったり意味のない電話だという状況でした。
当然管理部門の業務は電話対応だけではありませんので、意味のない電話に労力を割かれることを無くすべく、一次対応を秘書サービスへアウトソーシングする事にしました。

秘書サービスの選定

幾つかの秘書サービス会社とお話させて頂きましたが、当社の要望にあうサービスは実はそれほど多くないことに気づきました。
1つは、従来秘書サービスは社員数名のスタートアップ企業など小規模な事業者を想定しており、当社のような規模はあまり例がないということで、見積もり段階で断られたケースもありました。
また、一次対応として電話をかけて来られた方の要件次第で切り分けをお願いしたいという事情もあり、こちらも柔軟に対応していただけるというサービスが少なく、選定に苦労しました。
最終的には2社に絞込み、料金形態が当社の都合に合っていることや、柔軟に対応して頂ける事から決定しました。

電話対応フローの確認

まず普段電話対応を行っている管理部門や営業担当者へのヒアリングを実施し、現状の電話対応をどのように行っているか確認しました。
当社の製品問い合わせ、既存のお客様から担当者への電話、飛び込み営業など、想定されるケースを洗い出します。
また、どうしても秘書サービス側で対応できない事態が発生した場合は管理部門へ転送するなど、秘書サービスへ依頼する一次対応フローを作成しました。

メリット

運用が開始され、やはり営業電話を全てカットできたのは大きな変化でした。ある月の実績によると、なんと着信のうち60%近くが営業電話でした。
また、今までは毎回管理部門を経由していた担当者宛の電話が直接転送されるようになるなど、管理部門の電話対応労力が大幅に改善されました。

デメリット

管理部門が直接対応するのに比べ、どうしても一度外部サービスを挟むため対応時間が長くなってしまう傾向があります。
こちらは今後秘書サービス側と協力するなど、ある程度改善できると考えています。

営業時間外の対応

秘書サービスの対応は当社の営業時間内のみです。
それ以外の時間帯は留守電になるようになっており、こちらはClocoのIVR機能と留守電機能を組み合わせて実現しています。
IVRはコールセンターでよくある、「○○のお問合わせは1番、△△のお問合わせは2番を押してください」というような機能を実現するものですが、当社では曜日や時間で電話の動作を切り替えるために利用しています。
例えば平日営業時間は秘書サービスへ転送、秘書サービスが対応できない場合は東京コアへ転送、営業時間外は留守電、といった動作です。
また、留守電は即時、音声ファイルが添付されたメールで送られてきますので、どこにいても内容を確認する事ができます。

まとめ

携帯電話やSkype等が普及したとはいえ、業務では東京03番号等の固定電話を捨てるのはなかなか難しい状況で、ノマド化を妨げる一因になっていました。
今回のクラウド化、秘書サービスの導入でそれらの状況をかなり改善できたと思います。
今後も運用の改善など随時実施し、より良いノマド電話環境を実現したいと考えております。

最後までお付き合い頂きありがとうございました。